2019年4月16日 東京
国連大学上級副学長・沖大幹教授が所属する東京大学生産技術研究所は16日、国連のミレニアム開発目標(MDGs)の飲料水課題がなぜ史上初めて達成された世界目標だったのか、研究成果を発表しました。
2001年に策定され、2015年まで取り組まれていたMDGsの課題の一つが「安全な飲料水を持続的に利用できない人々の割合を半減する」という目標でした。この人口の割合を、1990年の24%から2015年には9%までへと減らすことに成功し、他の多くの課題が未達成で終わってしまった中、飲料水については、画期的な成果をもたらすことが出来ました。
東京大学、岐阜大学とTECインターナショナルの共同で行われた本研究では、なぜMDGsの飲料水課題が世界史上初めて達成することが出来たのか、そして現在進行中の持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、どのように役立たせるのか、調査しました。
「MDGsの飲料水課題達成は、確かに成功したと言えます。しかし、その背景には、比較的控えめな目標設定や、中国とインドの経済発展も大きく寄与していることが分かりました」と沖教授は述べました。
本研究チームは、MDGsに限らず、数多くの水問題解決に向けた国際的な取り組みについて、半世紀以上に及ぶ経緯について調査した結果、そもそもの目標設定にかなり幅があり、また、飲み水を「安全」とする定義についても統一されていなかったことが判明しました。
また、MDGs実施期間では、中国とインド両国において、経済発展に伴う水インフラの整備が急速に進み、改善された水源にアクセス可能な人口の増大の内訳は、中国とインドがほぼ半数を占めていました。
さらに、今回の調査では、改善された水源にアクセス可能な人口割合と一人当たりの実質国内総生産(GDP)において、相関関係があることも分かりました。
2015年で終了したMDGsの後継として設定されたSDGsでは、「すべての人々の、安全で安価な飲水への普遍的かつ平等なアクセスを達成する(100%目標)」と、達成のハードルが上がりました。
「MDGsよりも非常に野心的な目標であり、より具体的かつ厳しい数値でもあります。我々の研究成果によれば、この高いハードルはモチベーションと投資を刺激すると思います。経済発展と貧困削減への取り組みの中で、いい方向に進むと思います」と沖教授は述べました。
今回の研究成果は、ジャーナル「Nature Sustainability」に掲載されました。
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本件に関するお問い合わせ先:
国連大学
上級副学長
沖 大幹
+81-3-5467-1212
oki@unu.edu
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