2019年10月10日
「現代の奴隷制と人身売買に関する金融セクター委員会」は、ニューヨークにおける国連総会の会期中に、最終報告書「Unlocking Potential: A Blueprint for Mobilizing Finance Against Slavery and Trafficking(潜在的可能性を解き放つ:奴隷制と人身売買に対抗する金融の構想)」を公表しました。
2016年時点で、4,000万人を超える男性・女性・子どもたちが現代の奴隷制の被害者であったと推定され、これは185人に1人の割合です。また強制労働だけで年間1,500億ドル超が生み出されていると推定されます。現在、世界中で推定17億人が、適切な金融サービスにアクセスできずにいます。
国連大学政策研究センターが事務局を務める金融セクター委員会がまとめた本報告書では、現代の奴隷制と人身売買に対する金融セクターの取り組みを強化するための5つの目標と、その達成に向けた行動計画が提示されています。行動計画は、現代の奴隷制と人身売買に関する金融調査の強化、人身売買関連のマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与リスクに関するより適切な指標の策定、また、最も社会的立場の弱い人々のためのデジタル金融およびマイクロファイナンス(貧困層向けの金融サービス)を含めた社会的金融への投資などが含まれています。
本報告書は、金融セクター委員会が1年間にわたって実施した、3大陸における4回の国際協議や、100回を超えるステークホルダーとの非公式協議等の成果の集大成です。金融セクター委員会は、リヒテンシュタイン政府、オーストラリア政府、オランダ政府、リヒテンシュタインの財団および民間機関のコンソーシアム、ならびに事務局を務める国連大学政策研究センターによる、官民パートナーシップです。同委員会は、人身売買と児童奴隷の被害者、ヘッジファンド・商業銀行・リテール(小売)銀行の代表者、機関投資家、開発金融機関、および世界の規制当局を含む25名の委員によって構成されています。
また本報告書の公表に際して、金融セクターの取り組みをさらに加速させるべく、国連大学政策研究センターに拠点を置く新たなプロジェクト「奴隷制と人身売買に対抗する金融(Finance Against Slavery and Trafficking:FAST)」が、リヒテンシュタイン・イニシアチブによって立ち上げられました。北米と欧州の大手銀行12社および6つの被害者支援団体が連携するこのプロジェクトには、本報告書の実施に向けた支援、ならびに「被害者包摂イニシアチブ」が含まれます。
現代の奴隷制と人身売買の被害者はしばしば、金融取引上の身元情報や銀行商品を、マネー・ローンダリングや他の犯罪に使われる目的で人身売買業者に乗っ取られることがあり、それにより信用記録が傷つけられ、再被害のリスクが高い状態にあります。
被害者包摂イニシアチブでは、金融機関、被害者支援団体、規制当局、政府機関といった主要なステークホルダーが、識別された被害者に対して当座預金口座や普通預金口座、デビットカード等の基本的な金融サービスを紹介するための枠組みが提供されます。この国際イニシアチブは英国でHSBCにより開発され、カナダでノヴァ・スコシア銀行が試行に成功したアプローチを土台としており、現在オーストリア、カナダ、英国および米国で導入され、今後さらに規模を拡大していく予定です。
金融セクター委員会の委員を務め、今回の取り組みを主導したバリー・コッホ氏は、次のように述べています。「現代の奴隷制と人身売買の被害者は、被害によって引き起こる信用上の問題により、金融サービスへのアクセスが困難になることがあります。この問題に、大手銀行と被害者支援団体が連携して対応策を取っていることを嬉しく思います。私たちは、世界中から新たなパートナーが参加してくれることを心待ちにしています」
同委員会の事務局責任者を務めるジェームズ・コケイン氏はさらに次のように述べています。「世界中で4,000万もの人々が奴隷状態に置かれています。被害者の数を減らし、この悲劇的な搾取から抜け出した人々が再び奴隷状態に陥ることを防ぐためには、金融機関、被害者支援団体および政府によるパートナーシップが助けとなります。国連大学は、被害者包摂イニシアチブを支援することによってこれらの取組みを実現し、国連の持続可能な開発目標における目標8.7の達成に向かって進んでいくことを嬉しく思います」
本件に関するお問い合わせ
英語:国連大学政策研究センター 広報部
アントニー・ダーシ
dursi@unu.edu | +1-202-867-6592
日本語:国連大学 広報部
mediarelations@unu.edu | 03-5467-1275
注
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