野生動植物犯罪に立ち向かうために:国境を超える情報共有

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  • 2013年3月7日     東京

    2013年3月6日、東京 — 希少種および絶滅危惧種の動植物を保護しようとする国際的な取り組みにも関わらず、毎年何十億ドルにもあたる野生動植物の違法取引が行なわれています。しかし、野生動植物犯罪に関与している国境を越える組織を監視する万国共通の枠組みの欠如により、この問題の実際の規模はいまだに不明確です。

    さまざまな国際的取り組みにも関わらず、野生動植物の密猟者、密売人、消費者の違法消費連鎖の追及は、国家や機関間のデータ共有の隔たりにより妨げられ、政府や国際機関、研究機関、地域コミュニティ、産業界を含む関係者の間の情報共有次第である多国間環境協定(MEA)の効果への潜在的脅威となります。

    本日、バンコックで開催されているワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)第16回締約国会議のサイドイベント「Bytes Beyond Borders: Strengthening Transboundary Information Sharing on Wildlife Crime through the Wildlife Enforcement Monitoring System (WEMS) Initiative(バイツ・ビヨンド・ボーダーズ:国境を越える野生動植物犯罪に関する情報共有の強化)」で、野生動植物の専門家、捜査当局、政府代表者が集まり、国境を越える野生動植物の違法取引という問題への解決案および最先端技術の利用について検討します。

    2005年に、このような野生動植物犯罪に対する執行活動に関するデータの隔たりを埋める必要性を認識し、国連大学は国境を越える情報共有プラットフォーム ― 野生動植物の違法取引監視システム(Wildlife Enforcement Monitoring System、WEMS)のプロトタイプを開発しました。WEMSは、国境を越える野生動植物の違法取引に関するデータを各国の野生動植物課より収集し、政策決定過程に組み込む地域レベルのガバナンスモデルの必要性に応じて開発されました。

    その後、WEMSの取り組みは、国連大学高等研究所(UNU-IAS)、オランダのトウェンテ大学地理情報科学および地球観測学部(ITC)、野性動植物の違法取引に対する強力執行活動に関するケニアのルサカ協定タスクフォース(LATF)、およびハーバード大学の地理学分析センター(CGA)との間の堅牢な研究パートナーシップへと発展しました。

    国連大学副学長で、UNU-IASの所長のゴヴィンダン・パライル教授は、「違法的かつ犯罪的な行為による野生動植物の破壊は、国の安全や生物多様性保全、多くの人々の生活をも脅かす国境を越える国際的な問題です。違法的な野生動植物の取引に対抗するには、政府、NGO団体、研究機関、および捜査当局との間の協力および情報共有が必要です」と、 WEMSの可能性について述べました。

    WEMSの中核にあるのは、CITESのための順守監視を向上させるためにデータを測定および分析する地理情報処理システムを基盤とした取り組みです。国連大学により開発され、管理されているWEMSの技術的構造は、参加機関が情報をアップロードできる保護されたウェブ基盤のデータベースにあります。WEMSは、捜査当局、コンピューター科学者、政策立案者や、市民社会といった主要関係者を取り組む学際的な実地調査を基盤とすることにより恩恵を受けています。

    参加政府からの評価により、国連大学は2011–2012年ルサカ協定を通し、アフリカの4カ国(ケニア共和国、タンザニア連合共和国、ウガンダ共和国、コンゴ共和国)で実践された地域的試験段階に向けてWEMSのプロトタイプを再設計しました。WEMSの取り組みにより、参加政府は、 国境を越える野生動植物の違法取引に関する約170件のデータを効率的かつ容易に共有することができました。また、この成果により、WEMSは国境を越えるMEAの順守および実施のための実践的な枠組みとしての可能性を固めました。

    ITC所長のトム・フェルドカンプ氏はこのような包括的な戦略は、WEMSの成功に不可欠だと述べ、また「国境を越える野生動植物の違法取引に関する情報共有という課題は、異なる空間とガバナンス規模というところにあるため、縦のアプローチのみでは解決できません。さまざまな関係者や関係機関の橋渡し役として務めることは、異なる意見、ときには対立的な意見を取り込むことでもあります。アフリカにおけるWEMSの成功は、 このようなハードルを乗り越えたことを証明します」と、強調しました。

    LATFのディレクター、ボナベントゥル・エバイ氏によれば、この共同プロジェクトによって、「情報は、コミュニケーションおよび協力の強化における万能薬」であるという認識が再確認され、「効果的な情報共有ツールとして、WEMSは早期介入および予防策を促進し、貴重な野生動植物の違法取引を妨げ、野生動植物保護における良いガバナンスを推進します」と、述べました。

    アフリカにおいてWEMSが前向きな効果をもたらしたため、WEMSの次の対象地域としてASEAN地域が検討されています。今回のサイドイベントでは、現在のアフリカにおけるWEMSの取り組みを再確認し、ASEAN地域におけるWEMSの可能性を探るため、CITES、国連環境計画、国際刑事警察機構やCITES加盟国の捜査当局から専門家が集まります。

    ASEAN野生生物保護法執行ネットワーク(ASEAN-WEN)プログラム・コーディネーション・ユニットのシニア・オフィサー、マノップ・ラウプラセルト氏は、「ASEAN地域は生物多様性に富んでおり、また、野生動植物の搾取および違法的な取引を含むさまざまな原因により、常に絶滅の脅威にさらされている多くの絶滅危惧種の生息地でもあります。この問題を解決するには、野生動植物の違法取引を抑制するためのASEAN加盟国の取り組みの要求に対応および支援できる新しいツールと技術の導入が必要です」と、ASEANにおけるこの取り組みの見通しについて述べました。

    「アフリカで成功したWEMSモデルは、ASEANの国々が野生動植物犯罪に対抗するために必用な能力育成においても役立つことを信じています」と、言い添えたパライル教授は、このプロジェクトに対する国連大学の関与を強調。

    今回のCOP16のサイドイベントでは、ASEANにおけるこのような情報共有プラットフォームの可能性および各関係者の役割について議論を行い、現在の研究モデルに関する提案をします。また、地域的および国際的な専門家が、プロジェクトデータへの公共アクセスの可能性、さまざまな状況や国において長期的な持続可能性をどのように推進するかについて検討する機会でもあります。

    詳細につきましては、WEMSイニシアティブのウェブサイト(英語のみ)をご覧ください。

    お問合せは、以下に掲載のメディア窓口のいずれかにお電話またはEメールでお問い合せください。

    UNU-IAS: 有馬 牧子、arima@ias.unu.edu, (045) 221-2300

    ITC: Ms. Janneke Kalf, janneke.kalf@utwente.nl, phone +31(0)53 4874411

    LATF: Mr. Tom Tiriongo, t.tiriongo@lusakaagreement.org, +254 722 522 564

    ASEAN-WEN: Mr. Chrisgel Ryan Cruz, chrisgel@asean-wen.org, +66 84 323 6205