2022年11月8日 ジュネーブ
気候変動は脅威を増加させ、脆弱性や紛争リスクを悪化させるものとして長らく見られてきましたが、最新データでは、気候変動と武装勢力への勧誘とのつながりが示唆されました。データは、武力紛争からの出口管理(MEAC)イニシアチブの研究者らにより、気候変動に対し脆弱な紛争下のイラク、コロンビア及びナイジェリアの3カ国で収集されました。MEACイニシアティブは、国連大学政策研究センター(UNU-CPR)と国連軍縮研究所(UNIDIR)による共同事業です。
各地域で国連の研究者が実施した大規模アンケート調査や質的研究により、気候変動の影響が至る所で感じられ、経験されていることに加え、気候変動により農業や牧畜、漁業で生計を立てることがますます困難となっていることが分かりました。収入源をたたれた人々が武装勢力に向かっていることが示唆されています。
気候崩壊のリスクが世界で5番目に高いとされているイラクでは、国中で気候変動の影響が感じられています。一部地域は特に影響を強く受け、紛争構造に大きな影を落としています。タルアファルでは、気候変動によって生計維持に影響が出た人を知っていると回答した人のうち、29パーセントが、その結果いずれかの武装勢力に加わった知人がいる、と回答しました。武装勢力には、干ばつや凶作に関連した人々の苦しみを歴史的に悪用してきたISILだけでなく、ISILと戦うために動員された勢力も含まれる可能性があります。
コロンビアで行われたアンケート調査では、同国のさまざまな地理環境において、森林伐採や鉱業、その他の人為的な環境破壊の進行が報告されました。こうした変化により経済困難を経験したと回答した人のうち、14パーセントがその結果として武装勢力に加入した知人がいる、と回答しました。コロンビア革命軍−人民軍(FARC-EP)、民族解放軍(ELN)、コロンビア自警軍連合(AUC)を含む武装勢力の元加入者139人への調査の結果、自身のコミュニティで人為的な環境破壊の頻度または深刻さが増したと回答した人のうち、19パーセントがそうした環境破壊が武装勢力に参加した理由の一つであると回答しました。
ナイジェリアでは、ボルノ、アダマワ、ヨベの3州において現在、大規模なアンケート調査を実施中です。気候変動により生計維持における困難を経験した知人がいると回答した人のうち、その結果ボコ・ハラムに参加した知人がいると回答した人は15パーセントを占めました。実際、元ボコ・ハラム関係者自身に、同集団に参加した経緯への気候変動の影響について聞くと、気候変動関連の困難を経験したと報告した人のうち、16パーセントがそうした経験が武装集団への参加理由の一つだったと回答しました。
MEACイニシアティブのプログラム・マネジャー、ショバーン・オニール博士は研究とその意味合いについて振り返り、次のように述べました。
「武力紛争の防止や対応のための取り組みにおいては、気候変動を考慮する必要があることをエビデンスが示しています。気候変動は単なる国際的な安全保障の問題ではなく、人間の安全保障の問題であり、迅速かつ多分野にまたがる全体的な対応が必要です。」
MEACイニシアティブは、複数のパートナーによる多年度の共同事業です。個人がどのようにして、どのような理由で武力紛争から抜け出しているかを調査し、民間人としての生活に移行するための支援策の有効性を評価するための、統一的で厳密なアプローチを開発することを目的とします。MEACイニシアティブでは、エビデンスの基づく政策立案や実務に資するデータを収集しています。MEACイニシアティブが気候安全保障に関する研究プロジェクトとなることは想定されていませんでしたが、研究活動の対象国における武装勢力への加入・脱退の経緯について真に理解するためには、気候変動の影響を考慮せざるを得ませんでした。本事業やパートナーの国連機関、ドナーに関するより詳細な情報は、UNIDIRやUNU-CPRのウェブサイトからご確認ください。
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