強制労働、現代の奴隷制、人身売買、児童労働に取り組む開発援助についての新たな研究成果を発表

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  • 2018年9月14日     New York

    2018年9月13日、ニューヨーク-国連大学は13日、現代の奴隷制、強制労働、人身取引、児童労働に取り組む開発援助に関する新たな報告書「政府開発援助とSDGターゲット8.7:強制労働、現代の奴隷制、人身売買および児童労働に取り組む援助の測定」を発表しました。報告書によると、2000年から2013年にかけ、現代の奴隷制、強制労働、人身取引、児童労働に取り組む開発援助に、30カ国が計40億米ドルを超える資金を拠出したことがわかりました。報告書は、国連大学政策研究センター(UNU-CPR)のプロジェクト「デルタ8.7-8.7連合知識プラットフォーム」が作成したもので、国連の持続可能な開発目標(SDGs)ターゲット8.7の達成に向けて各国が公約している開発援助について、最も詳細かつ厳密に分析しています。SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、ターゲット8.7で193カ国が、2030年までに強制労働、現代の奴隷制、人身売買を、2025年までに児童労働をそれぞれ撲滅すべく、実効的な措置を取ると約束しています。

    報告書は、政府開発援助(ODA)、すなわち開発途上国の経済開発と福祉に焦点を絞り、これを促進する政府援助が、誰によって、何について、どこで提供されているかを分析・可視化しています。今回の分析について、デルタ8.7のデータサイエンス責任者で報告書の共著者のケリー・A・グリーソン氏は、「ターゲット8.7の達成に向けた進捗状況を把握するためには、どこに資源が投入されているのかを見極めることが重要となります」と話しています。報告書によると、ターゲット8.7の達成に向けた全世界の年平均ODA公約額は、2000年の1億1,900万ドルから2013年の4億3,000万ドルへと急増しています。調査では、新たなデータセットと研究手法によって分析を行っており、この方法によって奴隷制と人身売買に取り組むための将来的な支出の全体像が、さらに詳しく把握できるようになると期待されています。また、120万件を超える援助プロジェクトの公式データを分析するため、新たな言語処理アルゴリズムを開発し、これによって、ターゲット8.7に直接関連する援助プロジェクトが、2000年から2013年にかけて6,000件を超えていることが明らかになりました。

    「この種のテキストベース・データは通常、プログラマーが処理しますが、その作業には信じがたいほど長い時間がかかることがあります。データ選択のプロセスを自動化することで、私たちはプロジェクト・レベルのODA支出に関する質の高いサンプルを提供しながら、膨大なデータを極めて効率的に管理、集計できるようになりました」と、グリーソン氏はコメントしています。

    また、報告書の共著者のジェームス・コケインUNU-CPR所長は、「新しいデータセットとこれによって明らかになったパターンを見ると、強制労働や現代の奴隷制、人身売買、児童労働に関して、政府が公的資金の投入先をどのように決定しているか、重要な問題点が浮かび上がります。私たちの研究は、ドナーが支出をどのように記録、追跡しているか、そして、支出をどのように調整すれば、最も大きな効果が得られるかについて、話し合う必要性を示唆しています」とコメントしています。

    報告書は、ターゲット8.7の達成に向けた進捗状況の追跡を強化するため、さらに厳格なデータの調整とODA公約の追跡を求めているほか、ODAと非ODA支出を共有、集中化する必要性も明らかにしています。これは研究者や政策担当者にとって、支出が影響や成果にどう結びついているのかを判定し、ターゲット8.7の達成に必要な「実効的措置」の特定に役立つと期待されています。

    デルタ8.7は、ターゲット8.7の達成に向けた世界的なマルチステークホルダー型の取り組み「8.7連合」に対する貢献として、UNU-CPRが開発した知識・研究プラットフォームです。今回の報告書は、デルタ8.7による初の研究成果です。また、2018年9月24日には世界的なオンライン知識プラットフォームの発足も予定しており、政策担当者に実地の学習体験を提供するほか、データやエビデンスを理解し、ターゲット8.7達成に向けた政策対応ができるよう支援することにしています。

    報告書の全文やグラフなどのデータは、こちらで入手できます。

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    補足:
    • 今回の研究は、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)債権国報告システム(CRS)に基づき、エイドデータ(AidData)から提供されたODA適格国における125万2,036件の援助プロジェクトを対象としています。このデータセットから、新たな自然言語処理アルゴリズムを用いて、2000年から2013年までの間に実施されたターゲット7に直接関連するプロジェクト6,000件以上を特定しました。
    • この報告書は「デルタ7-8.7連合知識プラットフォーム」のオリジナル研究出版物です。デルタ8.7の資金は、UK Modern Slavery Innovation Fund(MSIF)が拠出しています。この報告書はMSIFから独立して作成されており、報告書の見解は著者のものであって必ずしも英国政府の公式見解を代表するものではありません。
    報道機関のお問い合わせ先:

    エミリー・シャーロット
    Communication, Monitoring, Evaluation and Learning Officer at Delta 8.7:
    cholette@unu.edu, +1 (347) 404-3062

    デルタ8.7 – 8.7連合知識プラットフォーム

    デルタ8.7は全世界で強制労働、現代の奴隷制、人身売買、児童労働の撲滅を目指すグローバル・パートナーシップ「8.7連合」に貢献しています。デルタ8.7プロジェクトは、SDGターゲット8.7の達成に寄与する政策の参考となるデータを提供し、政策担当者がそれらを活用するのに役立っています。また、そのための手段として、オンライン知識プラットフォームのDelta87.orgとオフライン・イベントを通じ、最も有用なデータやエビデンス、分析の収集を行っています。「デルタ8.7-8.7連合知識プラットフォーム」は2018年9月24日、オンラインで発足する予定です。

    国連大学政策研究センター

    ニューヨークの国連大学政策研究センター(UNU-CPR)は、国連システムの独立シンクタンクです。優れた研究を多国間システムに関する深い知識と結び付け、現在と将来のグローバルな公共政策上の課題に対し、革新的な解決策を策定しています。