新型コロナウイルスにより極度の貧困が再び10億人以上にのぼる恐れも

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  • 2020年6月17日     ヘルシンキ

    国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)は6月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により極度の貧困層が急増し、全世界で10億人を超える可能性があると推計した新たな研究報告書を発表しました。

    報告書『Precarity and the Pandemic: COVID-19 and Poverty Incidence, Intensity and Severity in Developing Countries (不安定な人々を襲うパンデミック:COVID-19と開発途上国における貧困の発生率、強度、深刻度)』では、今回の危機によって、世界の最貧層の所得喪失が1日当たり5億米ドルに達するおそれがあるほか、貧困の強度(直面している貧困形態の平均数)と深刻度も著しく悪化すると明らかにしています。さらに、中所得国における貧困が劇的に拡大する可能性が高く、世界的な貧困の地理的分布が大きく変わり、再び南アジアと東アジアが中心となるおそれがあります。

    今回の研究は、キングス・カレッジ・ロンドンの国際開発学教授であり、UNU-WIDERの客員シニア・リサーチ・フェローを務めるアンディ・サムナー氏が、同校国際開発学部のエドゥアルド・オルティス氏、オーストラリア国立大学のクリス・ホイ氏と共同で実施しました。

    研究者らは今回の研究結果を受けて、主要7カ国(G7)、主要20カ国・地域(G20)および多国間システムが世界的なリーダーシップを早急に発揮するよう求めるとともに、世界規模の貧困に対するCOVID-19の影響に取り組むための3項目からなる計画を提案しています。その3項目は以下のとおりです。

    • 貧困への影響と必要な資金調達について議論するために、G7、G20および国連の77カ国グループ(G77)の各代表者を議長とした、貧困とCOVID-19に関する緊急対応グローバル委員会を設置
    • 国際通貨基金(IMF)の債務返済猶予をすべての開発途上国を対象とするように拡大し、早急に資金を拠出するとともに、世界銀行への債務返済を少なくとも2020年末まで猶予
    • 新たに利用可能となった資金を、速やかに各国の現金支給などの社会保障プログラムに配分

    サムナー教授は次のように述べています。「COVID-19の危機によって、極度の貧困で苦しむ人々は再び10億人を超えるおそれがあります。数百万人の人々が貧困ぎりぎりで暮らしており、危機に見舞われれば貧困に逆戻りする不安定な状態にいます。今回の危機がまさに、こうした人々を貧困に陥れるきっかけになるかもしれません」

    「貧困に対する実際の影響は、政府がCOVID-19の被害を緩和するために、どのような策を講じるかによって決まってくるでしょう。私たちは3項目の計画を提案しましたが、その実施には地球規模のリーダーシップが早急に必要です。世界の最貧層は9月のG7首脳会議までも、11月のG20首脳会議までも、待てないからです」

    UNU-WIDER のクナル・セン所長は、次のように述べています。「世界の貧困の度合いと、COVID-19のパンデミックが世界の貧困層に及ぼす影響に関する今回の新たな推計は、厳しい現実を示しています。多くの人々による懸命な努力の成果が消えていく様子を、黙って見ているわけにはいきません。その影響の実態はいずれ明らかになりますが、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために必要な対策は、今、計画する必要があります」

    研究報告書全文はこちら

    報告書著者による解説記事はこちら

     

    取材に関するお問い合わせ
    日本語:国連大学 広報部
    mediarelations@unu.edu

    英語:国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)アネット・ヴィクトレロ
    annett@wider.unu.edu

    国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)について
    国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)は、1985年にヘルシンキで設立された、国連大学初の研究・研修センターです。世界の最も貧しい人々の生活状態に影響を与える構造的変動について、学際的な研究と政策分析を行っています。UNU-WIDERの活動には、同研究所の創設者の一人であるアマルティア・セン氏をはじめ、複数のノーベル賞受賞者が関与しています。