東日本大震災から間もなく1年が経とうとしていますが、未だ数千人にのぼる被災者の生活とコミュニティの再建が大きな課題となっています。今回のフォーラムでは、2004年のスマトラ島沖地震と津波、2005年のハリケーン・カトリナ、そして2008年中国四川大地震など、過去の自然災害との比較の中で東日本大震災の人々への影響について考察します。
ここでは、国際的な専門家で構成されたパネリストが、自然災害が人間にもたらす危険性や脆弱性に重点を置き、「恐怖からの自由」「欠乏からの自由」という側面から、人間の安全保障アプローチの有効性について討論を行います。人間の安全保障という概念は、これまで武力紛争の文脈で議論されてきましたが、自然災害後にも人々は同様の脅威にさらされます。自然災害は、余震や社会秩序の乱れといった「恐怖」、食糧や水や避難場所の「欠乏」という意味でより直接的な被害を人々に及ぼします。また近年の人口増加や気候変動により、さらに多くの人々が自然災害の被害を受けるようになってきました。大災害に対する理解と対策において、人間の安全保障のアプローチがどのように機能しうるのでしょうか。
本フォーラムでは、そういった人間中心の観点から、貧困、低開発、社会的弱者といった社会が抱える脆弱性に対し、自然災害がどのような影響を与えるのか、特に女性や子供、高齢者をどのように保護できるかについて考察します。また東日本大震災と他国の自然災害を比較することで、異なる社会・文化的な背景においてどのような影響を及ぼしうるのか、さらに日本のような工業化の進んだ国と開発途上国ではその影響にどのような違いがあるのかについても検討します。
人間の安全保障という概念の学際的な性質から、本フォーラムでは災害社会学、倫理、国際関係学、開発と保健医療といった幅広い分野の専門家を招いて討論を行います。
本フォーラムは、UNU-ISPの研究プロジェクト「人間の安全保障と自然災害」の共同研究の一部として、早稲田大学国際教養学部(SILS)、RMITグローバル都市研究所との共催で開催されます。本プロジェクトは、国際交流基金の後援のもと実施されています。
尚、本フォーラムは英語で行われます。(日本語の通訳はございませんのでご了承ください)。
国連大学本部 エリザベス・ローズ国際会議場